あらすじ

事故物件だと説明を受けたマンションに、私は引っ越してきた。 直前の居住者が部屋で亡くなっているというが、事件性はなく、警察の介入もないという。家賃が相場より安い以外、物件に特別な違和感はなかった。 築年数は経っているものの、管理は行き届いており、共有部分もきれいだ。住民もごく普通で、夜は驚くほど静かだった。 むしろ拍子抜けするほど、何も起きない。 入居時、不動産業者から「管理規約は必ず全部読んでください」と念を押された。 形式的な注意だろうと思いながら目を通したその文書は、最初のうちは、どこにでもある内容だった。 ただ、第九条に差し掛かったとき、私はわずかな違和感を覚えた。 文体が不自然で、主語が曖昧。改定履歴だけが異様に多く、その理由は毎回、同じ一文で記されている。 ――円滑な共同生活のため。 記者という仕事柄、説明できない引っかかりだけが、頭の片隅に残った。 この時点では、まだ何も起きていない。 それでも私は、そのマンションと、管理規約第九条のことを、忘れることができなかった。

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小説を読もう2026/02/02
  • 現在の作品管理規約第9条(改定)―円滑な共同生活のために