あらすじ
最新型のARコンタクトレンズが普及した近未来の日本。
高校生の優希は、新しいARの使用感を確かめながら登校する途中、取り壊し予定の空家の窓に、同年代の少女の姿を見る。
しかし、その少女は肉眼では見えず、旧型ARでも映らない。
最新型ARを装着した優希にしか見えない存在だった。
親友の翔と共に空家を訪れた優希は、少女が実体を持たないことを知り、恐怖と混乱に陥る。
やがて二人は、少女が「分岐しなかったもう一つの可能性」であること、そして優希自身がARをきっかけに“観測者”となってしまった可能性に辿り着く。
介護施設で出会った年老いた女性――少女の辿ったもう一つの人生を知った優希は、
量子力学の思考実験「シュレディンガーの猫」をヒントに、二つの可能性を“重ね合わせる”決断をする。
それは、世界を確定させる行為だった。
ARと量子、見える世界と見えない世界の境界で、少年たちは「見ること」の意味と向き合う。
これは、テクノロジーが進化した時代に描かれる、静かで切実な、ひとつの成長の物語。