あらすじ
「お前のメスは鋭すぎる。我々の平穏を脅かす」
王宮筆頭医師の座を約束されていた天才外科医・エレノアは、その高すぎる技術と妥協なき姿勢を疎まれ、宰相バルデルの陰謀によって全てを奪われた。
医師免許の剥奪、身に覚えのない罪、そしてスラム街への追放――。
だが、彼女は死んではいなかった。
泥と汚物にまみれた路地裏で、彼女は闇医者として腕を振るいながら、虎視眈々と爪を研いでいたのだ。
自らを追放した宰相への復讐のため。そして、重い病に侵されたこの国を救うため。
「患部を切除し、詰まった血管を通し、毒を排出する。ただし、患者(くに)には気づかれないように」
エレノアが集めた協力者は、かつて男たちによって人生を狂わされた女たち。
顔を変えた元スパイ、物流を支配する元伯爵夫人、声を奪われた歌姫、才能を搾取された研究者、そして宰相に捨てられた愛人。
武器は剣でも魔法でもない。「医療技術」と「知略」、そして「女たちの連帯」。
物流を止めて兵糧攻めにし、情報を操作して敵を孤立させ、人心を掌握して権力を無力化する。
これは、たった一人の外科医が、メス一本で腐敗した大国を解体し、縫合するまでの、静かなる革命の記録である。
【本作の見どころ】
◆「魔法」VS「現代医療知識」
魔法が絶対的な力を持つファンタジー世界で、彼女が使うのは、研ぎ澄まされたメスと、麻酔、消毒、縫合といった医療知識、そして化学知識です。
「魔法障壁をどうやって突破するか?」「不死身の怪物をどうやって殺すか?」
知恵と技術で魔法を凌駕するカタルシスをお楽しみください。
◆ 捨てられた女たちの華麗なる逆転劇(ざまぁ)
エレノアの仲間たちは皆、権力者や男たちに利用され、捨てられた過去を持ちます。
そんな彼女たちがエレノアの手によって新たな「顔」と「役割」を与えられ、かつて自分たちを虐げた男たちを社会的に、経済的に、そして物理的に追い詰めていく様は痛快そのものです。
◆ 国一つを「患者」に見立てた壮大な戦略
エレノアは国を統べる悪を「病原菌」、腐ったシステムを「癌細胞」、物流を「血液」と診断します。
単なる武力衝突ではなく、経済封鎖や情報戦を駆使して、国の機能を麻痺させ、病巣だけをピンポイントで切除する。これまでにない「外科医視点の国盗り物語」です。
【登場人物紹介】
●エレノア
主人公。かつての王宮筆頭医師。
冷徹で合理的、目的のためなら手段を選ばないが、根底には「命を救う」という医師としての揺るぎない信念を持つ。口癖は「オペを開始する」。
●マリー
スラム育ちの元盗賊。エレノアに命を救われ、助手となる。
明るく健気だが、スパイとしての潜入能力は一流。本作のムードメーカーであり、エレノアの良き理解者。
●バルデル
王国の宰相。エレノアを追放した張本人。
国王を傀儡にし、国の実権を握る独裁者。冷酷非道だが、極めて優秀な頭脳を持つ最大の敵。
●ルナ(元セリーヌ)
かつての宰相の愛人。用済みとして捨てられそうになったところをエレノアに救われる。
「顔」を変えることで、新たな人生と復讐の機会を手に入れる。
●シリル(元ソフィア)
王立研究所の元研究員。女性であることを理由に手柄を奪われていた。
エレノアのチームの技術担当として、魔法を無効化する装置や兵器を開発する。
●マーガレット
元伯爵夫人。夫に財産を奪われかけたが、エレノアの協力で北部の商業を支配する「女帝」へと変貌する。
王国の物流(血管)を握る重要人物。
●レイラ
元歌姫。喉を潰されかけたが、エレノアの手術により「魔性の声」を手に入れる。
その歌声で民衆を扇動し、世論を操る広報担当。
腐敗した権力、傲慢な魔法使い、そして侵略してくる帝国軍。
全ての病巣を排除し、彼女はこの国を治療できるのか?
痛快医療ファンタジー戦記、ここに開幕。