あらすじ

世界は二つに分かれている。時間の流れが速い世界と、ほとんど止まった世界。通常、人はどちらか一方に属し、互いの存在に気づくことも干渉することもない。しかし、管理局の観測員・柳端はその規則を超えた存在だった。境界付近で理論では説明できない信号を受信し、脳の奥に直接触れるような声を聞く。恐怖ではなく、長い孤独に耐えた者が抱くかすかな期待の震えだった。その瞬間、彼は自分の生きる世界が、単なる観測対象ではなく、運命に巻き込まれ始めていることを理解する。 分離以前の世界は一つだったが、安定してはいなかった。昼夜の長さや老化の速度は地域ごとに異なり、同じ出来事が「すでに起きたこと」と「まだ起きていないこと」として同時に観測されることもあった。国家や軍ではなく、小さな観測集団が世界の歪みを研究しており、その中には柳端の祖父母も含まれていた。祖父は時間を「層」として捉え、祖母は装置よりも人の感覚を信じ、異常のある場所には必ず“別の今”が存在すると記録した。 分岐の決定打は都市の消失だった。地図や記録から完全に消えたが、祖父母はそれが“別の時間層へ沈んだ”結果だと知っていた。世界は崩壊を防ぐため、時間の流れが速い世界と、ほとんど止まった世界に分離された。しかし完全な分離は不可能で、境界には薄い歪みが残る。柳端は今、その歪みの中心に立ち、管理局の監視を避けつつ、未知の真実に迫る。消失区域の信号、境界の向こうの少女の声――二つの世界を隔てる壁は薄く、触れられない。しかし、二人の運命は不可逆的に絡み合い、世界の未来を揺るがす。 世界は均衡を保つために設計されてきたが、柳端と少女の存在が新たな波紋を生む。監視網、消失区域の謎、時間の歪み――全てが絡み合い、物語は動き出す。二つの世界の間で揺れる心と運命が、圧倒的スケールで描かれる物語が、今始まる。

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カクヨム
カクヨム2026/02/01
  • 現在の作品世界がそれを「未定義」とよんだ