あらすじ
乙女ゲーム『薔薇の宮廷恋物語』の世界に、名前も出ないモブ令嬢として転生したクリスティアナ。
平穏な人生を願う彼女だったが、この世界には決定的な「欠落」があった。物語を駆動させるはずの「悪役令嬢」が、どこにも存在しなかったのだ。
その結果、物語は停滞し、行き場を失ったヒロインのアメリアは、ある日ついに叫び声を上げる。
「どうして誰も私を苛めてくれないのっ!?」
ヒロインとしての役割を全うするため、自分で自分を罵倒し、自分で自分を傷つける「一人二役の自作自演」を始めたアメリア。
周囲がその狂気に引き気味になる中、唯一の観客であるクリスティアナだけは、その孤独な戦いをノートに記録し続ける。
「ここは物語じゃないわ、現実よ」
一人のモブが踏み出した勇気が、物語の強制力を打ち破り、歪な舞台の幕を引く。
これは、役目(シナリオ)を失った少女たちが、冬を越え、自分たちだけの人生(あした)を歩み出すまでの、静かな愛と友情の物語。