あらすじ
勇者の力を刈り取ってしまった悪魔、テンチ。
それは世界を救うためでも、壊すためでもなかった。
悪魔でありながら善意しか持たず、
人間界で配達をし、日常を学び、
ただ「正しいこと」を選び続けた結果――
勇者の《聖》は、彼の中に流れ込んだ。
闇と光。
善と悪。
聖と権能。
どちらも正しく、どちらも危うい。
そして誰も、悪意を選んでいない。
勇者は勇者であることに疲れ、
教会は「正しさ」を疑えず、
魔界は均衡を保とうとして苦悩する。
これは、
勇者でも魔王でもない存在が、
世界の定義そのものを揺らしていく物語。
光は必ずしも救いではなく、
闇は必ずしも悪ではない。
善と闇が、まだ名前を持たない世界で――
悪魔は今日も、選択を続けている。