あらすじ

手紙はそんな一文で結ばれていた。 最後まで読み上げた少女はまだ、便箋に目を落としたままじっと項垂れている。 「……ありがとう」 私はなんとかそう返したけれど、胸の中はぐちゃぐちゃに渦を巻いて、それなのに痛いほど静かで、吹雪に足を取られたみたいに息が苦しかった。 「……ねえ、」 私は口を開いた。喉まで迫り上がった氷を、吐き出すように。 「嘘、なんでしょう? この手紙」 「あれから親切な人に助けられて、満足いく人生を過ごせたっていうのも」 「治らない病気になってしまったから、親切な旅の人にこの手紙を託したっていうのも」 「……だって兄さんは、一度も私を『君』なんて呼ばなかった」 「どんなに悲しいことでもいい。本当のことが知りたいの。ねえ……兄さんは、本当はどうやって死んだの?」 ぱたぱた、と紙を濡らす音がした。 「勇者」だった少女はひゅうと息を吸って、涙が胸に詰まったみたいに咳き込んで、それから吠えるように言った。

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カクヨム
カクヨム2026/02/01
  • 現在の作品魔王はあなたの兄だった