あらすじ

掌の図書館──  都会での過酷なサラリーマン生活を捨て、父の死を機に故郷・波瀬《はぜ》村へ戻ってきた主人公。  彼がそこで目にしたのは、公共交通機関が機能不全に陥り、移動の手段を失った老人たちが「陸の孤島」で取り残されている現実だった。 「返納」という正論が、この村では「死」に等しい。  主人公はなけなしの貯金をはたき、村内一律二百円という破格の運賃で個人タクシーを始める。  客として乗ってくるのは、皆どこかに「痛み」を抱えた老人ばかり。  孤独ゆえに万引きを繰り返す啓蔵さん。  亡き孫との思い出だけを糧に生きるハナさん。  彼らが差し出すのはわずかな小銭や、ときにはお金よりも切実な「人生の欠片」だった。  赤字続きの経営、底をつきかける貯金、そして押し寄せる過疎化の波。  それでも主人公は、バックミラー越しに彼らの声に耳を傾け続ける。 「お年寄り一人には、図書館一つ分の智慧がある」  これは、消えゆく村で、人々の記憶と尊厳を運び続ける一人の運転手と、彼に人生を託す老人たちが織りなす、静かで情熱的なヒューマンドラマである。

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カクヨム
カクヨム2026/02/01
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