あらすじ
名を与えなかった選択の翌朝、学園は何事もなかったかのように始まる。
チャイムは鳴り、授業は進み、生徒たちは日常へ戻っていく――ただ一つの違和感を残したまま。
名簿に、空白がある。
席が一つ、余っている。
だが、誰も「誰がいないのか」を思い出せない。
均衡によって管理された世界では、名は存在を固定する錨だった。
呼ばれ、記録され、観測されることで、人は“ここにいる”と認められる。
だが彼らは前日、その名を与えない選択をした。
代償はない、と告げられたはずだった。
それでも世界は、確かに変質している。
消えたのは誰か一人ではない。
名を持たない存在の余白が、日常の隙間に薄く滲み出している。
悠真、ナナミ、そして「俺」は気づき始める。
これから均衡が突きつけるのは、分かりやすい犠牲ではない。
「誰を救うか」ではなく、
「誰として残るか」という問いだということに。
名を持つことは、守られることでもあり、縛られることでもある。
期待され、役割を与えられ、均衡の部品として配置されること。
では、名を失うとは何なのか。
自由か、消失か、それとも別の形の存在か。
日常に紛れ込む小さな歪み。
思い出せない違和感。
選択の痕跡だけが、静かに積み重なっていく。
均衡は、もう問いを隠さない。
少年たちは、名を持ったまま揺れ続ける覚悟を試される。
呼ばれなかった名の、その先で。
物語は、新たな選択の段階へと進み始める。