あらすじ
「偽聖女には、家畜の餌がお似合いだ」
そんな罵倒とともに教会を追放されたエマが持っていたのは、真鍮の小鍋ひとつだけ。
聖女としての名誉も居場所も奪われたけれど、彼女には前世から引き継いだ食の知識と、食材の声を聴く力がありました。
護送役として雇われたのは、Sランク冒険者のザック。
人間不信で無愛想な彼は、エマをただの厄介な荷物としか見ていません。
けれど、エマが作る料理は、傷ついた体と心を内側から溶かしていきます。
カビたパンを捨て、捨てられた野菜くずで黄金色のスープを作る。
毒だと思われているキノコを、極上のステーキに変える。
美味しい匂いが漂うたび、二人の間にある冷たい壁は少しずつ崩れていくのです。
王都から迫る追手。
隠された過去の傷。
そして、ただの料理好きだと思っていたエマの鍋に秘められた真実。
国境を越える旅路の果てに、二人が選ぶのは契約の終わりか、それとも。