あらすじ

僕は清洲城の周囲をジョギングしている。 耳にはワイヤレスイヤホン。流れているのはローリング・ストーンズ。 もちろん、天正十年のこの世界にそんなデバイスは存在しない。 けれど、僕の脳内では確かにミック・ジャガーの絶叫が、戦国の重たい空気の粒子を切り分けている。 僕の名前は池田恒興。通称、池田君。 織田信長亡き後の天下を決める「清須会議」の宿老の一人だ。 そして僕は知っている。Wikipediaを検索すれば、僕が数年後に討ち死にすることは既に「編集権限のロックされた確定済みの未来」であることを。 柴田勝家は出力の合わない古いアンプのようなヘヴィメタルを奏で、羽柴秀吉はマルウェアの仕込まれた無料アプリのような笑顔でアルゴリズムを書き換える。 そんな非生産的なパワーゲームの中で、僕はただ完璧なアルデンテのパスタを茹で、自分という名の「生身のデータ」が消去されないようにステップを踏み続ける。 城壁の影に見え隠れする「羊男」の影。 世界のテクスチャが剥がれ落ちる「404 Error」の予兆。 歴史という名の不自由なサブスクリプションを解約し、僕は僕自身のエンター・キーを叩く。 これは、戦国の虚無と21世紀の孤独が交差する、最も「ロール」した清須会議の記録。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
カクヨム
カクヨム2026/01/31
  • 現在の作品池田HARUKI恒興@清須会議 〜Wikipediaに僕の死が書かれているとしても〜