あらすじ

笑ってしまう癖を持つ男・坂口蒼と、言葉より観察を信じる男・倉田慎吾。 二人は警察でも探偵でもない。表向きはそれぞれ動画編集者と保険会社の事故調査員として生活しながら、偶然と必然の間に落ちた“違和感だけが残る出来事”を拾い続けている。 転倒、事故、行方不明。 どれも事件として扱われるには弱く、だが見過ごすには不自然な痕跡。 蒼は衝動と感情で現場に踏み込み、慎吾は静かに事実を積み上げる。正反対の二人だからこそ、同じ場所に辿り着くことができた。 彼らが追うのは犯人ではない。 「なぜ、これはなかったことにされたのか」という問いだ。 やがて二人は、都市の片隅で繰り返される不審な転倒死の共通点に気づく。それは個人の悪意ではなく、制度、空気、責任の分散によって生まれた“誰も止めなかった結果”だった。 事件を追うほどに、蒼の過去――笑えなくなったある出来事と、慎吾が一度だけ見逃した判断ミスが、現在と交錯していく。 正義を名乗る資格のない二人は、それでも選択を迫られる。 見なかったことにするか。 それとも、名前のない現実を拾い上げるか。 派手な解決も、喝采もない。 だが確かに、人は変わる。 これは、社会の隙間に落ちた声を、ただ黙って拾い続ける二人の物語。

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エブリスタ
エブリスタ2025/12/29
  • 現在の作品『笑う男と、見逃さない男』