あらすじ
◆序
共和国を代表する高等教育と研究機関として知られる山荘は、変わり者の教員が特に多い大学であると学術界では専らの噂。その変わり者どもの中でも、私たち夫婦と並び称される有名な変人夫婦であり、私たちにとって友人たちでもある二人が、本書の主人公かつ筆者だ。
二人は大公国の末期、大公政権を倒した反乱軍で出会い、技術開発を通じて反乱軍の勝利に多大なる貢献をした。二人は終戦後ほどなく除隊し、しばらく経った頃、山荘で発足したばかりの大学組織に参加して教員として活躍し始める。技術系の教員として多くの技術者を育成するだけでなく、大公国改め共和国の国家事業にも数多く関わり、技術開発を通じて社会問題の数々を解決して名を馳せた。さらに学外でも、いくつかの民間事業も興し、同じく技術を生かして、人々の生活を豊かにする、数々の品物を世に送り出している。
一方で私生活では、約十五歳差という年齢や出身、経歴の差を感じさせぬ、仲睦まじい夫婦としても世間に知られている。反乱軍を率いたベスティア姫と、反乱軍の知恵袋と称される『先生』の関係とは逆の年齢差なので、「逆歳の差婚」と言う人も多いが、歳の差は歳の差、正も逆もない。まあ、同じ山荘の教員として籍を置く私たちからすると、「年下の方が偉そう」という意味でなら「逆」と言えるだろうと思ったりはする。
いや、自伝出版に向けて相談を受け、いくつかの助言をしただけの同僚の戯言など蛇足だろう。二人が照れたり恥ずかしがったり身もだえしながら執筆していた本書は、その歳の差を乗り越えて愛情を結び合う夫婦の、壮大な恋愛譚でもある。ぜひご堪能頂きたい。
そんな夫婦の手記の整理を頼まれ、僭越ながら若干の編集を加えた。共通の友人とともに物語としての体裁を整えるに当たっては、二人の原稿を交互に展開することで、両者の思いを示すよう試みている。小見出しの「◆」「◇」が、夫婦それぞれの記述だ。
『傀儡の姫』ハナ