あらすじ
明日、世界は確実に消滅する。
理由は不明、回避不能。
人々はその事実をすでに受け入れ、
世界は静かな「最終日前日」を迎えていた。
主人公・ハルは、ごく普通の青年として暮らしている。
朝はゴミを出し、パンを焼き、コーヒーを飲む。
ただ一つ違うのは、彼がかつてこの世界を創った“元・神”であり、
世界が終わる原因を知っている、唯一の存在だということだった。
能力も権限もすべて失い、
彼はもう奇跡を起こせない。
告白も贖罪も選ばず、
「何もしない一日」を生きることを選んでいる。
そんな彼の前に現れるのが、
世界の終わりを前向きに楽しむ少女・サエ。
彼女は言う。
「明日がないなら、失敗してもいいでしょ?」
二人は散歩をし、肉まんを分け合い、
取り留めのない会話を交わす。
救済も希望も語られないまま、
ただ日常だけが、丁寧に積み重なっていく。
この短編は、
終わりが確定した世界で、
意味を持たない選択を肯定する物語。
神が引退したあとの世界で、
人間として過ごす最後の一日が、
静かに、しかし確かに描かれる
〈世界最終日の生活記録〉である。