あらすじ
時折、世界から切り離されるように「静止」してしまう少女、サラ。
彼女の時間を動かせるのは、超常的な集中力「ゾーン」によって寿命を物質に封じ込めることができる職人、父・時任(ときとう)だけだった。
娘が健やかに一歳年を重ねるたび、父の肉体は数倍の速さで朽ちていく。
窓の外の庭が色彩を失い、工房がドライフラワーで埋め尽くされていく中、サラの二十歳の誕生日は刻一刻と迫っていた。
彼女の時間が完全に凍りつく前に、父が最後の一振りに込めた「人生」とは。
これは、静寂の深淵で命を削り、琥珀色の時間を繋いだ父と娘の、残酷で美しい愛の物語。