あらすじ
都市の片隅の語学スクールで出会った二人の青年――
社交的だが内心は「支配欲」に苛まれる会社員・斎藤と、孤高をまといながら過去に囚われ続ける男・橘啓介。
偶然の酒席で、斎藤は恋人の髪を「自分の証」として切らせたことを語り、橘もまた十数年前の故郷での出来事を打ち明ける。
それは、修道院で人々の期待を背負いながらも迷い続けていたシスターが、一人の少年から贈られた業務用バリカンをきっかけに、すべてを剃り落として覚悟を得た――という物語。
その断髪の場面に立ち会った橘の心には、救済ではなく「残響」だけが刻まれ、いまもなお彼を縛りつづけている。
過去に救われたのは彼女か、それとも橘か。
そして現在、結衣の短い髪に触れるたび「自分もまた残響の輪に囚われている」と気づく斎藤は、果たしてどんな答えにたどり着くのか。
断髪という象徴を通じて、人が何を手放し、何を残して生きるのかを描く、心理ドラマ長編。