あらすじ
野口の集落に暮らす景司は、嘘をつかず、言い訳もせず、黙って責任を背負うことを自分の生き方としてきた男である。妻に先立たれ、都会へ出た一人息子・直樹とも多くを語らぬまま年月が過ぎていた。久しぶりに帰郷した息子との再会は、喜びよりも戸惑いを伴い、景司は「正直であること」が必ずしも相手に伝わるわけではないと気づき始める。野分の夜、初めて口にした謝罪と、言葉にしきれぬ思い。やがて息子を引き止めずに送り出し、景司は父としての役目が形を変えて続いていくことを知る。これは、声高に語られない父の愛と、静かな肯定の物語である。