あらすじ
隣の席の加賀は、
まあ、美人だと思う。
それだけだ。
下の名前も知らないし、特別な関係でもない。
なのに、ある朝。
俺と加賀は、中身が入れ替わっていた。
よくある話だろ。
たまにいるんじゃないか、こういう奴。
このクラスにだって、ひとりくらい。
例えば。
顔はいいのに陰気な船越と、やたら女子に人気の宇多川。
男は憂鬱になり、女は踏み込む。
今の俺たちみたいに。
加賀は俺の身体で、やけに堂々としている。
髪をかき上げ、女子の視線を意識しているのが丸わかりだ。
男子が微妙に引いているのも気づいていない。
まあ、好きにすればいい。
午後の小テスト。
答えは全部わかる。
けれど、彼女の実力に合わせて半分は空欄にした。
ただ一つ、どうしても埋めなければならない欄がある。
俺は、君の下の名前を知らない。
トイレ。入浴。着替え。
不便はこれから増えていく。
俺は男だからまだいい。
けれど、加賀は驚くほど神経質になっていた。
放課後。
俺は彼女として、彼女の家に帰ることになる。
なんとかなる。
そう思いたかった。
けれど本当は、考えるだけで怖かった。
君の外見は、それだけで俺を落ち着かなくさせるから。
彼女の周りに群がる誘惑。
俺には、君を守る責任がある。
「お前に、彼女は触れさせない!」
その一言は、
彼女の中にいる「俺自身」への警告にも聞こえた。