あらすじ
五十歳を過ぎた山田太は、都会の仕事を捨て、理由も分からぬまま故郷へ戻った。
何かを選ぶたびに別の人生が頭をよぎり、結局どれも掴めなかった男である。
衰えた町、人影のない駅前。そこに映ったのは、空っぽになった自分自身だった。
出世した旧友の正論、古文書を読む幼なじみ、山奥で火を守る老人、川と土を守る仲間たち。
効率や成功から捨てられた「役に立たないもの」が、生きる根っこだと気づかされる。
太はノートを開き、選ばれなかった無数の人生に、ささやかな返事を書き始める。
忘れられた声が、故郷で再び響き出す物語。