あらすじ

春は、長い冬を越えた村にとって、命そのものだった。 一年を繋ぐために蓄えられた肉と酒は、祝祭のためではなく、生き延びるための総量である。 それを奪ったのは、通りすがりの傭兵団だった。 彼らにとって、それは略奪ではない。 自らに課した過酷な条件を満たした者だけが享受できる、ひとつの「遊び」だった。 村の女を先頭に、人々は山を追う。 泥にまみれ、爪を剥がし、重力に抗いながら、春を取り戻すために。 だが、追われる傭兵たちは荷を捨てない。 捨てれば生きられることを知りながら、あえて酒と肉を背負い、銃と規律を弄び、山そのものを遊び場として踏み越えていく。 追いつけそうで、決して追いつけない距離。 夜が明け、山頂に朝日が差すとき、彼らが祝杯をあげるのは、村へ届くはずだった春だった。 『追いつけぬ春』は、誰かが辿り着けなかったことなど、気にも留めない。

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カクヨム
カクヨム2026/01/29
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