あらすじ
三十歳、会社員の佐藤健一は、すべてに疲れ果て、冬の夜の駅のホームに立っていた。
赤く点滅する「通過」の文字、迫りくる特急列車――彼はその一歩を踏み出そうとする。
しかし、立ち食いそばの匂いと、うるさいほどに鳴り続ける心臓が、彼を現実へ引き戻した。
死は救いではなく、ただの「切断」だと気づいたとき、健一は思いきり後ろへ退く。
尻餅をつき、痛みを感じ、寒さに震えながらも、彼は初めて「死んでたまるか」と呟く。
冴えない明日は、きっと何も変わらない。
それでも――各駅停車の扉は、彼を終わらせるためのものではなかった。
これは、人生のどん底で立ち止まった男が、もう一度「生きる側」に戻るまでの、たった一夜の物語。