あらすじ
絵を描くことで、他人の未来の行動を見てしまう力を持つ女性――
不知火 灯(しらぬい・あかり)。
彼女の能力は予言ではない。
特定の人物を思い浮かべた瞬間、その未来の一場面が、意思とは無関係に紙の上へ描き出されてしまうだけだ。
その力をきっかけに、灯は若手刑事・東堂恒一と出会い、未解決事件の捜査に関わっていく。
彼女の描いた絵は、いくつもの事件を未然に防いだ。
だが同時に、未来を「見せ、共有し、信じさせる」ことが、現実そのものを歪めていく危険にも気づき始める。
やがて現れるのは、未来を整理し、展示し、固定しようとする者たち。
善意と合理性を掲げ、予測可能な社会を作ろうとする彼らは、灯を“象徴”として利用しようとする。
描けば、未来は固まる。
描かなければ、誰かが代わりに描く。
過去の火災事故と、自分自身が無自覚に関わっていた原点を知った灯は、究極の選択を迫られる。
未来を照らし続ける存在になるのか。
それとも、あえて照らさないことを選ぶのか。
これは、世界を救う物語ではない。
未来を当てる物語でもない。
未来を点けないという、ただ一つの介入を選んだ人間の物語である。