あらすじ
公爵令嬢ビオネ・ド・マルセイユの朝は早い。
夜明け前の静謐な空気の中、彼女は王立神殿の最奥にある「沈黙の聖域」で、神への祈りを捧げていた。
「おお、慈愛に満ちてる神よ。今日という日が、すべての民にとって健やかなるものとなりますように……」
深く、静かな祈りの声。
しかし、その肉体は静寂とは程遠い状態にあった。
ビオネは、重さ二百キログラムはあろうかという純銀製の聖壇を片手で持ち上げ、もう片方の手で床と水平に空気椅子の姿勢を保っていたのである。
「997、998、999……、1000……、ふぅ……。|筋肉《かみ》への感謝が足りませんわね……。あと三セット、追い込みましょう!」
彼女にとって祈りとは、己の肉体を極限まで練り上げることと同義であった。
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