あらすじ
「ただいま」
実家の玄関を開けても、返ってきたのは静寂だけだった。
いつもなら煩わしいほど話しかけてくる母が、ガスストーブの前で固まっている。
視線は手元のスマートフォンに釘付けだ。
「ねえ、何見てるの?」
「うーん……」
会話はない。指先だけが、15秒ごとの快楽を求めてスワイプを繰り返している。
それは、私が東京のWeb業界でよく知っている「アルゴリズム」の仕業だった。
ドーパミンを垂れ流す工業製品としての「ショート動画」。
それが、実家という聖域すらも侵食していく絶望。
そして、それを批判しながらもスマホを手放せない私。
現代の「合法ドラッグ」と、変容してしまった家族についての記録。