あらすじ
「これぞ人類を心酔させ、依存させる究極の『経済包囲網』です」
――威厳に満ちた最強の魔王は、参謀の息子がついた「ただの推し活」を、今日も深遠なる知略と信じて心酔する。
漆黒の鎧を纏い、玉座に君臨する魔王ヴォルガディス。だが、その威厳とは裏腹に魔界は未曾有の危機に瀕していた。勇者は辺境の魔王城まで辿り着けず、軍事予算は底を突き、魔物たちは退屈に死にかけている。
そんな停滞を打破すべく、老参謀が推薦したのは一人の青年、息子アルバスだった。
冷徹な瞳と、一切の隙を見せないポーカーフェイス。魔王はその貌に「次世代の覇道」を期待するが――実態は違った。アルバスは、人間界の『聖女』を崇拝する、ただの重度な狂信者だったのである。
「くく……この時がきたか……人生最大の転機が!!(※公金で推しを愛でる権利を得たぞ!)」
アルバスは、聖女を魔界に招き入れ、彼女の笑顔を見るためだけに魔界の改造を決意する。
「加速の罠」と称した、聖女の馬車を揺らさないための舗装道路。
「精神汚染」と称した、聖女に献上するための最高級スイーツ開発。
「脱力トラップ」と称した、聖女の旅の疲れを癒やす温泉リゾート。
アルバスが冷徹に告げる「深遠な知略」の数々を、魔王は「戦わずして勝つ究極の支配」と信じて全肯定し、莫大な国費を次々と注ぎ込んでいく。
やがて魔界は、意図せぬ形で世界一の観光大国へと変貌を遂げ、かつてない爆益を生み出し始めた。
沸き立つ魔物。潤う国庫。そして、魔界を気に入って満面の笑みを浮かべる聖女。
それら全てを「恐怖支配の成果」だと胸を張って勝ち誇る魔王だが、その実、彼は一人だけ何も気づいていなかった。
「――そう、魔王は純粋バカだった」
嘘と勘違い、転がる経済の濁流が巻き起こす、魔王軍おもてなしコメディ、ここに開幕。