あらすじ
「忘れるからこそ、毎回新しい気持ちで作れるんだな」
東京の下町にある創業三十年の洋食店『ビストロ・アムール』。
頑固で完璧主義の料理長・関根寛次(せきね かんじ)と、副料理長の息子・怜音(れおん)は、水と油のような親子だ。
怜音は重度の「物忘れ」癖があり、オーダーミスやボヤ騒ぎは日常茶飯事。しかし彼には、一度食べた味を完全に再現できる「絶対味覚」と、客の体調に合わせてレシピを即興で変える「優しさ」があった。
ある日、寛次が病に倒れ、店は怜音一人に託されることに。
マニュアル通りにできない息子が編み出したのは、客の顔色や体調を書き留めた一冊の「ネタ帳」だった。
記憶(レシピ)を失う恐怖と戦う父と、記憶(オーダー)を持てない息子。
欠けだらけの二人が、厨房という戦場で互いの「凸凹」を埋め合い、最高の味に辿り着くまでの、美味しくて温かいヒューマンドラマ。