あらすじ
世界全体の幸運と不運、理想と真実は、常に等価でなければならない。 鏡の聖女ミラは、婚約者である王太子の醜い本性をすべて鏡の中に引き受け、彼を「完璧な王子」として光の中に立たせてきた。 しかし、光を独占した王太子は、自らの足を支えていた影を忘れ、彼女を「暗い女」と断じて切り捨てた。
「右を差し出せば、左が削れる。それが鏡の法則です」
長きにわたる不公平な取引は、一枚の手鏡を伏せることで終焉を迎える。 逆流する醜悪、崩壊する理想。 すべてを失った王宮を後にし、ミラが辿り着いたのは、鏡を必要としない「心を見る王子」の側だった。 五感と感情を丁寧な筆致で描く、静かなる破滅と再生の物語。