あらすじ
遠い未来の地球。
国家エウラは、冷戦状態にある諸国と不安定な均衡を保っていた。
その中心にいる王女フィーナ・アービトラは、
特別な才能も、戦闘能力も持たない。
本ばかり読んで何もしない姫だと、
周囲からは半ば呆れられている存在だった。
彼女が頼れるのは、
裁定を示すだけで決断しないAI《アル》と、
「裁くが、罰しない」を信条とする王家の思想だけ。
やがて国境で起きた小さな事件をきっかけに、
フィーナは選択を迫られる。
戦わずに均衡を保つのか。
それとも、世界を止めるほどの力を使うのか。
合理性、正しさ、最適解――
それらが必ずしも人を救わないとき、
彼女は“決断する責任”だけを引き受ける。
これは、
戦争に勝つ物語ではない。
選んだあとに残るものと向き合い、
世界の憎しみを終わらせようとする王女の、
静かな長編SFである。