あらすじ
「君との婚約を破棄する」——その言葉を、私は五年間待ち続けていた。
侯爵令嬢リーネは、王宮の大広間で婚約破棄を告げられる。聖女候補に心変わりした婚約者エドワード。泣き崩れる姿を期待する周囲の視線。けれど私は、完璧な微笑みで一礼した。
『ようやく解放される』『今夜は祝杯をあげましょう』——心の中で歓喜しながら。
五年間、退屈な自慢話に付き合い、愚かな失言を揉み消し、「完璧な婚約者」を演じ続けた日々。その全てが終わる。清々しい解放感と共に広間を去ろうとした、その時。
「『地獄の底で末永く』——か」
氷のように冷たい声が、私の心の声を言い当てた。
漆黒の髪に凍てつく青い瞳。「氷の公爵」「北方の死神」と恐れられるカイル・ヴァルトシュタイン公爵。彼は無表情のまま告げる。
「——面白い女だ」
私の本性を見抜いた氷の公爵と、仮面を脱いだ元・完璧な令嬢。
これは、五年間の我慢を終えた私が、本当の自分を取り戻す物語。そして——予想外の相手に心を溶かされていく、痛快で甘い逆転劇。