あらすじ
紹介文(カクヨム用あらすじ)
【余光暦214年。太陽が死にかけ、灰の降る世界。】
外縁第九殖界の最果て、通称「アッシュ・ステーション」。 そこでは今、奇妙な病が広がっていた。 貴重な水を飲んだ者が、熟しすぎた果実のような甘い香りと共に、幸福な眠りへと沈んでいく――。
聖王庁から派遣されたのは、楠 詩音(くすのき しおん)。 人ならざる「蒼白さ」を湛えた美貌ゆえに、**【青貌のエクソシスト】**と呼ばれる神職。 彼は、自らの内に流れる呪われた吸血鬼の血を、一珠ごとに聖印が刻まれたロザリオチェーンで縛り上げ、静かに祈る。
だが、眠れる人々の喉が、詩音の知らない声を紡いだ。 「……Sion(シオン)」
それは、五年前の惨劇で封じたはずの異母兄――最高序列の吸血鬼、ルシアン・ド・ヴァルモンの、愛撫にも似た招きだった。
乾いた砂の上に落ちる、黒く歪な執着。 失われた相棒(オクト)の遺物を胸に、詩音は再び「甘い深淵」へと足を踏み入れる。