あらすじ

2013年、春休みの午後。
高校1年生・橘佳織は、親友の早川麗華とモール内のスターバックスで待ち合わせて、ラブロマンス映画を観に行くはずだった。
最寄りバス停の一つ手前で降りた佳織は、映画館へ向かう途中で先輩・柳沢洋介と「偶然」出会い、一緒に建物まで歩いて別れた。
その後、モール内の薄暗い通路を通ってスターバックスへ向かう途中――
防犯カメラが捉えた彼女の姿は、一瞬の激しい白いノイズに飲み込まれ、まるで空間が裂けたように跡形もなく消えた。
二分後。待ち合わせ場所には、誰もいなかった。
麗華はスマホを握りしめ、ただ待っていた。
電話は繋がらず、LINEは既読すらつかず、時間だけが残酷に過ぎていく。
周囲の笑い声、足音、コーヒーの甘い匂い……すべてがいつも通りなのに、佳織だけがこの世界から完全に「切り取られた」。
麗華だけが、日常の表面にぽっかり空いた「穴」に引きずり込まれていく。
やがて、通路の角に落ちていたお揃いのハートのキーホルダー。
鎖は不自然に切れ、金属が異様に冷たい。
カメラ映像のノイズの中には、ぼんやりとした「何か」の影が一瞬浮かぶ。
警察は「乱れ」と片付けたが、麗華は見た。
佳織の後ろに、立っていたはずのないものがいた。
失踪を知った柳沢洋介は、警察から「最後に一緒にいた男」として追及され、佳織の日記に繰り返し出てきた自分の名前が暴かれると、世間から「ストーカー」「誘拐犯」の烙印を押され、濡れ衣を着せられる。
麗華と洋介は互いに疑いながらも、バス停から通路までを何度も辿り、夜通し探し続ける。
しかし、手がかりは増えず、捜査は迷走し、事件は未解決のまま闇に沈んだ。
二十三年後。
洋介は毎年春になるとあの通路に立ち止まる。
麗華は教師となりながら、夜中に突然涙を流す。
佳織はどこへ消えたのか。
彼女が最後に残したのは、濡れ衣と、決して晴れない空白だけだった。


待つ女
――彼女が戻ってくるのを、誰かがまだ待っている。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
アルファポリス
アルファポリス2026/01/26
  • 現在の作品待つ女