あらすじ
十二月の夜。
薪ストーブの温もりに包まれたフレンチレストラン。
母の誕生日を祝う席で、九十三歳の祖父がふと語り始めた。
それは、これまで誰にも話してこなかった、
幼い頃に出会った「兄のような存在」の記憶だった。
遠い南の島と、日本の農村。
交わるはずのなかった世界が、かつて確かに交わった時間がある。
なぜ、その少年はある雨の日、
土砂降りの中で天を仰ぎ、声を上げたのか。
その光景を見つめていた大人たちは、何を思っていたのか。
語られなければ、消えてしまう記憶がある。
世代を越えて手渡されたその物語は、
「言葉で伝えること」「書くこと」の意味を、静かに問いかけてくる。
これは、実際にあった出来事をもとに綴られた、ノンフィクション・エッセイ。