あらすじ
眩い朝日に祝福されたはずの、転校初日。 不和鈴江(ふわ・すずえ)を待っていたのは、宇宙の底に放り出されたような、冷たく孤独な教室の空気だった。
「誰の記憶にも残らないように過ごそう」 そう決めた彼女の机に届けられたのは、隣席の少年・西郷(さいごう)くんからの、小さなメモ用紙。
一枚の紙のやり取りから始まった交流は、やがて放課後の並木道で「魔法の夜空」を見つけるほどの特別な絆へと変わっていく。
けれど、お伽噺のような時間は、夏休みの直前に告げられた「西郷くんの引越し」という唐突な別れによって、呆気なく幕を閉じた。
彼が消えた夏休み。
喪失感に沈む鈴江の前に現れたのは、彼と同じ香りのする一匹の赤いトンボだった。
これは、孤独の淵にいた少女が、不思議な出会いと眩い光の記憶に導かれ、世界との繋がりを見つけ出すまでの、再生の物語。
――たとえ、すべてが夢だとしても。
あの日、私には確かに光が見えていた。