あらすじ
辺境の村で宿屋を手伝うナギは、竜の噂のせいで街道が止まり、物資も旅人も減っていく現実に耐えていた。それでも「朝ごはんだけは温かく」と粥を炊き、今日を始める火を守り続ける。
ある日、仕入れに出た父が戻らない。村人は恐れて動けず、ナギは白い小鳥に導かれるように霧の谷を越え、灰の峰へ向かう。そこで待っていたのは、噂の“恐ろしい竜”だった。
震える手で願いを告げるナギに、竜は牙ではなく背中を差し出す。竜の体温は焦げるほど熱くなく、ただ冬の冷えた指をほどく温度だった。父を見つけたナギは、竜の短い吐息で鍋を温め、山の上で小さな朝ごはんを作る。
怖いはずの相手が、いちばん優しかった。竜の背中で覚えた温度は、村に戻っても消えず、次の朝へ続いていく。