あらすじ
登場人物紹介(超短縮版)
■ 慶太
完成形が最初から聞こえてしまう少年。
歌わず、前に出ず、音と世界の“境界”に立つ構築者。
■ 詩音
歌う才能を持つ妹。
聞こえてしまう歌と向き合いながら、
「自分で選ぶ声」を探している。
■ Sound Universe
音楽が実在する並行世界。
完成形を求めすぎるがゆえに、
人間の世界と衝突し始める。
■ 向こう側の音楽家たち
Sound Universeに存在するアーティスト群。完成し続けなければ存在できない世界の住人。
詩音は、静かな高校生だった。
教室の窓際でイヤホンをつけ、放課後には誰にも聴かれないはずの歌を口ずさす。
彼女にとって音楽は、夢でも目標でもなく、感情があふれたときに自然と漏れてしまう現象だった。
兄の慶太は、音楽を「感情」ではなく「構造」として捉える人間だった。
彼は妹の声を記録し、分析し、世界と接続するための枠組みを静かに組み上げていく。
やがて詩音の歌は、彼の設計した“Sound Universe”と呼ばれる音楽世界の中で、ひとつの座標を持ち始める。
ある放課後の小さな事故をきっかけに、詩音の声は現実に触れ始める。
学校、夜の部屋、ライブハウス。
音は閉じた内側から外へと流れ出し、彼女自身もまた、世界に置かれる存在へと変わっていく。
やがて兄は役割を終え、Sound Universeの背後から姿を消す。
守られる影を失ったあと、詩音は初めて「ひとりで歌う」という選択に向き合う。
これは、才能の物語ではない。
感情が音となり、音が世界として定義されていく、その過程を描く静かな成長の記録である。