あらすじ

突然の断罪により、聖女・ソレイユはすべてを失い、国を追われた。他人やピンチ状態の植物の心の声が聞こえるその力は、真実を暴く一方で、彼女から安らぎを奪う呪いでもあった。  辿り着いた辺境の町で出会ったのは、少年・オーレと、へっぽこ英雄と称されてその名を嫌う彫刻師・ルーナスだ。彼は、亡くなった者や去ってしまった者への想いを彫刻として残す『想刻師』を生業としていた。  居場所を失ったソレイユは、ルーナスの仕事を手伝う中で、依頼人たちの言葉にならない想いに触れていく。喪失、後悔、愛情、そして手放せなかった記憶――それらを聞き、他人の感情を受け止め続けることで、彼女自身の心の傷もまた深く抉られていった。  一方でルーナスもまた、英雄の隣にいただけの自分を『名ばかりの英雄』と卑下し、何も成し遂げられなかった過去から逃げ続けていた。  そんな二人の傍らには、想いは神に委ねるべきだと説く、ルーナスの友人で牧師のエルネスがいる。信仰と人の想いの間で揺れる彼との関わりを通し、ソレイユは自らの力の真実と向き合うことになる。それは癒しや奇跡を与える力ではなく、歪めることなく想いを受け取り、次の誰かへと繋ぐ力だった。それは時に癒されない現実や、救われなかった過去を突きつける。想いを受け取るたびに、ソレイユは自らの無力さと向き合わされ、心が折れそうになる。それでも彼女は、誰かの想いを無かったことにしないため、立ち止まりながらも歩み続ける。  誰かを救うことはできなくても、想いを聞き、刻み、受け渡すことはできる。ソレイユは『聖女』であることを捨て、一人の人間として生きる道を選ぶ。  ルーナスもまた、英雄ではない自分を受け入れ、想刻師として未来を刻む決意をする。  これは、喪失を抱えた者たちが、想いと共に前へ進むための再生の物語である。

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カクヨム
カクヨム2026/01/25
  • 現在の作品想刻師のいる辺境で