あらすじ
「——リディア・フォン・クロノワール。本日をもって、貴様との婚約を破棄する」
五年三ヶ月と十二日。それが私が第二王子に捧げた時間の総計。装飾品を控えたのは殿下の命令。政治の話を遮られ、心から笑える日など一度もなかった。
そして今、殿下は没落男爵家の令嬢を傍らに、私を「退屈な女」と嘲笑う。
——けれど、殿下。貴方は知らなかったのですね。
私が『時計塔の巫女』であることを。時を司る者を蔑ろにすると、何が起きるかを。
婚約破棄を告げられた瞬間、王城中の時計が止まり、殿下の命の護符に罅が入る。私は何もしていない。ただ——貴方のために祈ることを、やめただけ。
「もう遅いですわ、殿下。私の針はもう、貴方を指していません」
時計塔の公爵令嬢が手にした力は『止まった時を動かす』こと。そして私の前に現れたのは、銀髪の青年——隣国の時計塔を守る、もうひとりの時の守護者。
「俺と来い、リディア。お前の時間を、正しく刻める場所へ」
これは、偽りの婚約に縛られていた少女が、本当の愛と居場所を見つけるまでの物語。止まっていた私の時計が、再び美しく動き出す——。