あらすじ

新人一年目 × ほろ苦い青春 動くことのない桜の木は、今日も海の中幼稚園の園庭に立っている。 人間にとっては別れの季節と呼ばれる三月も、桜にとってはただ巡る時間の一部だ。 四月一日、新年度。 桜の木の前で行われる職員紹介の中に、新人教諭・あおさのりこの姿があった。 「早く覚えて、戦力になりたい」 そう語る彼女は、勢いだけでこの場所に飛び込んできたようにも見える。 物語は、桜、喉、カメラ、色鉛筆、靴、体温計―― 園に存在する「物」や「場所」の視点を通して、あおさのりこの一年を断片的に映し出していく。 声が出なくなる朝。 記録される保育室の風景。 無駄に見える仕事に費やされる時間。 叱責と沈黙。 置き去りにされる足音。 懸命に保育と向き合いながらも、組織の論理と期待にうまく馴染めないあおさのりこは、少しずつ痩せ、静かに追い詰められていく。 そして年度末。 園門の前で頭を下げ、彼女はこの場所を去る。 次の日から、あおさのりこは門をくぐらない。 それでも幼稚園は誰かを迎え、誰かを送り、時間は進む。 動かない桜の木は、ただ蕾を開花させていた。 これは、成功でも成長でもない。 「泳げなかった一年」を、場所に預ける物語。

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エブリスタ
エブリスタ2026/01/23
  • 現在の作品揺らぎ〜私はうまく、泳げない〜