あらすじ
夜。
明かりを消した部屋で、ひとりの男は単眼鏡を覗く。
向かいのマンションに灯る無数の窓。
カーテンの隙間からこぼれる、他人の生活の断片。
彼は干渉しない。
声をかけない。
触れない。
ただ「観ている」だけの、無害な観客だった。
だがある夜、
閉ざされていたはずの一室から漏れ出す、異常な光。
次の瞬間、彼は――
見てはいけない「完成した死」を目撃してしまう。
通報しない。
語らない。
沈黙を選んだ彼は、知らぬ間に事件の外側から、
静かに、しかし決定的に巻き込まれていく。
警察の足音。
日常へ侵入するノイズ。
「見た」という事実が、
彼の倫理と自己認識を内側から侵食していく。