あらすじ
記念写真を撮るたびに目を閉じてしまう癖を持つ景司は、入社記念写真でも例外なく失敗を重ねる。動画から切り出せば救えるはずだったが、そこには奇妙な事実が映っていた――景司以外の全員が、同時に目を閉じていたのだ。それを境に、街では目を閉じたまま歩く人々が増え、世界は「見なくても成立する形」へと変質していく。目を開けている景司だけが、その歪みと消失を認識できる観測者となる。人々は抵抗なく世界の一部へと組み込まれ、異常は誰にも疑われない。最後に残された選択は、目を閉じて安らぎに加わるか、開いたまま世界の崩壊を引き受けるか。景司は一瞬だけ世界を見据え、やがて静かに瞬きをする。その痕跡だけが、誰にも気づかれぬまま残される。