あらすじ
国内最大手ITコンサルティンググループの部長代理・真田陽介(28歳)。彼は、若くして「合理性の怪物」と恐れられる有能な男だった。
だが、彼には封印した過去がある。10年前、劣悪なネット環境下で、ラグという鎖に繋がれながらも、狂気的な予測射撃のみを武器に世界と渡り合った伝説のプレイヤー『陽炎(かげろう)』。
「ゲームに生き甲斐を求めても、腹は膨れない」
そう悟り、未練なくアカウントを捨てた彼は、持ち前の異常な集中力をビジネスへと転用し、社会的地位を築き上げた。
しかし、現場を軽視し、保身に走る老害上層部の策略により、真田は突然解雇を言い渡される。
「……いいさ。この不自由な椅子にも飽きていたところだ。せいぜい俺のいない泥舟の漕ぎ方でも練習しておくんだな」
未練なく退職した真田の手元に残ったのは、ビジネスで築いた莫大な資産。
そして、10年前の自分が喉から手が出るほど欲しかった――最高(フルスペック)の通信環境とPCデバイス。
枷(ラグ)は、もうない。
10年ぶりにログインした戦場で、真田は「止まって見える」現代のプロ共を事務的に処理していく。10年前、回線格差のせいで海外勢に「中堅」と嘲笑われた死神が、ついにリミッターを解除したのだ。
会社は崩壊し、プロは絶望し、世界は再び『陽炎』の名に戦慄する。
だが、すべてを焼き尽くした先に真田が選ぶのは、栄光の座ではなく、あまりにニヒルな幕引きだった。
これは、最高のリミッター解除で「自分自身の過去」をデバッグする、唯我独尊の退職祝いだ。