あらすじ
部屋の片付け中に見つけた、古い紙のカレンダー。
書き込みだらけの中で、ひとつの月だけが不自然だった。
予定魔だったはずの自分の字が、そこだけ一切ない。誕生日も、仕事も、通院も、メモすらもない。完全な空白。
おかしいと思い、スマホのスケジュールやメール履歴、写真フォルダを確認する。
だが同じ期間だけ、記録が抜け落ちている。ログも、位置情報も、購入履歴もない。まるでその数日間だけ、人生から切り取られているように。
気味が悪くなり、友人に聞くとさらに奇妙なことを言われる。
「いや、その週、毎日会ってただろ」
「カレンダー見ながら打ち合わせしたじゃん」
「体調悪いって言ってたよな?」
証拠は相手のメッセージの中にだけ残っている。
自分の側だけ、返信も記録も消えている。
やがて気づく。
その空白の期間、部屋の防犯カメラのデータだけが、なぜか“上書き保存されずに”残っていることに。
再生ボタンを押すと、そこには毎日同じ時刻、同じ角度でカレンダーを書き直す自分の姿が映っていた。
何かを書き込んでは、破り、また書いて、破り、最後に真っ白にして壁に戻している。
そして最後の日。
映像の中の自分は、カレンダーに一言だけ書く。
「思い出したら、また来る」
直後、カメラに向かってこちらを見る。
――今と同じ顔で。