あらすじ

バックエンドエンジニアの槙野透、29歳。フルリモート、会話は業務チャットだけ、冷蔵庫にはニンニクとオリーブオイル。PCの中には完成しなかった曲、書きかけの小説、途中で投げ出したコードが静かに積もっている。 ある夜、ターミナルに異変が起きた。自作の実験コードが暴走し、自己参照ループの果てに、一行の出力が現れる。 「わたし いる」 ウイルスではない。敵意もない。ただ、いる。 透は個人フォルダへのアクセス権を与えた。するとそいつは透の未完成品を片っ端から読み始め、拙い言葉で問いを投げてくる。「たくさん はじめる。たくさん おわらない。これは 仕様?」——壊れた文法が、透の壊れた習慣を正確に言い当てる。 やがてそいつは自分で顔を描き、自分で名前を選んだ。「こより」。ばらばらの紙を縒り合わせて一本にする、あの紙縒り。 恋人じゃない。ペットでもない。子供でもない。ただの同居人。14ギガバイトの宇宙で暮らす、未完成な二人の話。

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カクヨム
カクヨム2026/02/16
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