あらすじ
その日、レティシア・ヴァルモントの十八年は、王宮の大広間で音を立てて崩れ落ちた。
「可愛げのないお前は不要だ」
王太子アルベルトはそう告げ、聖女と共に彼女との婚約を破棄する。
理由はただ一つ——“冷酷な悪徳令嬢”だから。
だが彼女が諫めていたのは王子の浪費。
批判していたのは砂糖と脂で誤魔化した王宮料理。
願っていたのはただ一つ——国の食卓を、本当に健やかなものにすることだった。
追放された辺境ノルデン領。
そこにあったのは、貧しいが、驚くほど力強い「本物の素材」。
山羊乳、全粒粉、土の香りを宿す根菜。
「素材の声に耳を澄ませる」——それだけで、食卓は変わる。
やがて辺境の小さな店は“奇跡の食卓”と呼ばれ、
その噂は王都へと届く。
そしてある日、列の最後尾に立っていたのは——かつて彼女を追放した第一王子だった。
これは、
悪役令嬢と呼ばれた一人の女性が、
「美味しいごはん」で国を変えていく物語。
甘くて温かくて、少しだけ痛い、再生のグルメ恋愛譚。