あらすじ
【あらすじ】
かつて世界を破滅へと追い込んだ『魔王』。その最期の断末魔は、勇者の傍らで戦いの記録を綴り続けた記録係の青年・ニルスに、逃れられぬ呪いとして刻み込まれた。
――【肉体の時間を止め、死を禁ずる呪い】。
この呪いを受けた者は、年を取らず、傷ついても即座に再生する。だがその代償は、肉体が徐々に魔の力に侵食され、やがて自我を失った「魔人」へと成り果てること。
しかし、大戦から200年。仲間たちが次々と去っていく中、ニルスは当時の姿のまま歩き続けている。彼の穏やかで強固な聖心性が、魔人化を極限まで食い止め続けていた。
ニルスが旅を続ける目的は、ただ一つ。
いつか、内なる魔王の呪詛(種)を排除する**「壊呪の秘術(かいじゅのひじゅつ)」**を探し出すこと。
旅の道中、ニルスはかつて記録した勇者たちの技術を、止まった時間の中で何万回、何億回と反復し続けてきた。
魔王を切り裂くような天賦の才はない。だが、**「200年間の絶え間ない修練」**は、彼の技を神技へと押し上げていた。
立ち寄った街で、型に悩む騎士がいれば「君の先祖なら、ここで呼吸を整えたはずだよ」と、極限まで洗練された基礎の剣筋を見せる。
魔力運用に詰まる魔導師がいれば「昔の賢者は、もっと単純に考えていたよ」と、最適化された魔法理論をそっと授ける。
彼にとってソレは「死ぬまでに済ませておきたい技術の継承」に過ぎない。
だが、呪われた時の中で磨き抜かれたその一端は、現代の英雄たちからすれば**「神話の再現」**に見えるのだった。
「僕はただの記録係。……でも、君たちが紡ぐ新しい物語を書き留めるくらいなら、もう少しだけ長く歩いてもいいかな」
自らの死に場所を求め旅する男が、行く先々で絶望した人々に「生きる希望」を配り歩く。
これは、呪われた記録係が自らの終着点を見つけるまでの、優しくて少し寂しい、再生の記録。