あらすじ
デザイン系の専門学校を卒業した鏡見有莉澄(28)は、絵の道に進む自信を持てず、一般企業で働いている。新卒だった頃、同じ部署でさりげなく支えてくれた先輩・景兎(34)の存在は、今も心に残っていた。
一年前、景兎──現在は人気クリエーター「雪白風雅」として活動する彼──は、仕事の重圧から深いスランプに陥っていた。描くたびに迷いが滲み、独立当初の熱も掴めない。そんな時、SNSで偶然目にした「ハムスターさん」という女性アカウントの絵に心を救われる。
“この線は、まだ前に進もうとしている”
そう感じた景兎は、礼を伝えたくてDMを送った。
互いに本名を伏せたまま交流が始まるが、有莉澄は雪白のプロフィール写真を見てすぐに気づく。
「この人……景兎先輩だ」
しかし、先輩後輩ではなく“今の自分”として向き合いたくて名乗らなかった。
やがて雪白が多忙になりDMは途切れがちになるが、有莉澄は偶然、彼がコンテストの審査員を務めることを知る。
“知り合いとしてではなく、作品で気づいてほしい”
その思いで応募を決めた。
審査の日、雪白は提出作品の中に、
一年前、自分を救った“あの線” を見つける。
作者名──鏡見有莉澄。
ハムスターさんであり、かつての後輩であり、
そして“雪白風雅としての自分”を見てくれた相手だった。