あらすじ
黒田晋二、32歳。大手コンサルティング会社のマネージャー。
月の残業は150時間。休日出勤は当たり前。最後にまともに眠ったのがいつだったか、もう思い出せない。
ある日、限界を超えた身体が崩れ落ちた。
目を覚ますと、そこは石造りの大聖堂だった。
「勇者召喚の儀、成功いたしました」
飛ばされた先は、異世界・レクエス王国。魔王の脅威に対抗するため、異世界から勇者を召喚する国。
——ただし、この国には『勇者保護法』が存在する。
第一条 勇者の労働時間は、一日八時間を超えてはならない。
第二条 七日につき二日の完全休養日を与えなければならない。
第三条 勇者の就寝時間は二十二時とし、居室は施錠される。
「……これで魔王を倒せるんですか?」
「倒せます。——かつて、それを守らなかった勇者がどうなったか、ご存知ですか?」
勇者の力は、心の充足度で上限が決まる。
壊れた心では、どれだけ鍛えても真の力は発揮できない。
そして——心が空の勇者は、魔王に取り込まれる。
過去に召喚された三人の勇者は、いずれも過労で壊れ、闇に堕ちた。
だが、生粋の社畜である黒田にとって、「休め」という命令は「働け」よりも遥かに難しい。
「皆さん、あと3時間は作業できますよね?」
「できません。本日の業務は終了です。おやすみなさい、勇者殿」
担当管理官リーゼの鉄壁の労務管理。残業ゼロを掲げる騎士団長。働かせすぎない国。
対するは、兵を使い潰して成果を求めるシュバルツ帝国——かつての会社と同じ匂いのする、ブラックな敵。
コンサル仕込みの頭脳で軍を改革しながら、休むことを覚え、仲間を信じることを思い出し、少しずつ人間に戻っていく。
これは、社畜が勇者になる話ではない。
勇者が、人間に戻る話だ。