あらすじ
小学四年生の柚木蛍は、いじめに苦しみ、祖母から伝えられた「鬼呼びの唄」で記憶を消してもらう。満月の夜、裏山の祠で現れた子鬼が蛍の痛みを喰らうが、その重さに涙する。蛍は記憶を失う代わりに、心の奥に空虚を抱えたまま成長していく。
十八年後、蛍は小学校教師となり、かつての自分を思わせる少女・大野結衣のいじめに気づく。結衣が「忘れたい」と呟いた瞬間、蛍の中に封じられた感覚が揺らぐ。その後、祖母の死をきっかけに遺された日記から、過去に自分が鬼を呼んでいた事実を知る。痛みは消せても学びは消える――祖母の言葉を思い出しながら、蛍は結衣を救おうと決意する。
結衣が祠で鬼を呼ぼうとする夜、蛍は駆けつけ、自らの過去を告白し、記憶を失う代償と鬼の悲しみを伝える。そこに、かつて蛍の記憶を背負った子鬼が現れ、十八年の苦痛を語る。蛍は涙ながらに謝り、鬼に感謝を告げる。鬼は静かに闇へと消え、蛍は結衣に「痛みを抱えて生きること」を教える。
やがて結衣に笑顔が戻り、蛍も過去の加害者からの謝罪を受け入れる。月夜に鬼を想いながら、蛍は誓う――もう誰も痛みを鬼に押し付けさせない。記憶の重さを共に抱え、生きていくのだと。