あらすじ
石畳の冷たさを覚えている。
王妃である私は、敵国と内通した罪を着せられ、断頭台に立たされていた。証拠は捏造。それでも裁きは覆らない。最前列には、夫である王がいた。
彼が一言否定すれば、私は救われた。
けれど彼は沈黙した。
「国のためだ」
その選択を、私は最後まで責めることができなかった。
彼なりに愛してくれていたと、分かっていたから。
ただ――私は選ばれなかった。
刃が落ちる瞬間、群衆の中でただ一人、涙を流していた人がいる。
騎士団長。
寡黙で、常に王の傍らに立っていた男。
ほとんど言葉を交わしたこともないはずなのに、彼の瞳はまるで、二度と取り戻せないものを失ったかのように絶望していた。
そして世界は暗転する。
――目を開けると、三年前の舞踏会だった。
まだ婚約前。
まだ何も奪われていない時間。
二度目の人生。
今度は、同じ選択を繰り返さない。
国を優先する人ではなく、私を見てくれる人を選ぶ。
けれど不思議なことに、騎士団長の視線はあの夜と同じだった。
深い後悔と、揺るがない決意を宿した目。
まるで彼もまた、あの結末を知っているかのように。
「今度は、必ず守ります」
そう告げる声は低く、真っ直ぐで、嘘がなかった。
合理よりも、立場よりも、すべてよりも。
ただ一人の女性として、私を選ぶ人。
これは、処刑された王妃がやり直す物語。
今度こそ――心から愛され、幸せになるために。