あらすじ

午後の聖ミカエル教会は、祈りの余韻だけを残して静まり返っていた。 礼拝堂の脇、古い聖具庫だった小さな部屋。 蝋燭の炎が揺れ、埃っぽい空気に細長い影を刻む。 そこに、白い修道服のシスター、エリザ・ノアールはいた。 細い指で煙草を挟み、乾いた煙をゆっくりと吐き出している。扉が小さく軋み、教会に似つかわしくない男が入ってきた。 黒いコートの襟元に、銀の十字架が鈍く光る。 男は静かに彼女の前に立ち、口を開いた。 「……一本くれ」 エリザは無言で箱を差し出す。 男は一本抜き取り、火を点ける。 神の家で、シスターが煙草を勧める。 そんなことが許されるはずのない場所で、 二人は煙を分け合う。 「神の許しは得たの?」 「本当の神様だったら煙草ぐらいでギャーギャー言わねぇだろ」 シスターの唇に、乾いた笑みが浮かぶ。 男の視線が、十字架に留まる。 「その割に、十字架はちゃんと首から下げてるのね。偽善者? それとも……」 煙が二人の間をゆっくり昇り、 蝋燭の炎を揺らす。 神聖な空間に、禁忌の匂いが広がる。

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小説を読もう2026/02/15
  • 現在の作品煙と十字架